(あとがきより)
政府の「原子力ポスターコンクール」に対抗して「脱原発ポスター展」を開催しようという声がツイッターを基点に盛り上がりはじめたのは、東京電力・福島原発の事故が起きる半年ほど前のことでした。
あの事故が起きたとき、ちょうど私たちは「脱原発ポスター展」サイトを準備している最中でした。2011年4月末に急いでサイトを公開して「デモに持っていけるポスターを投稿してください」と呼びかけました。すぐに応募が殺到し、今や作品の応募は世界各国から1500点(2012年3月現在)に達しようとしています。
(中略)毎日のように届く、新たな使い方の報告を見ながら、作品を投稿した人だけでなく、モノにした人、展示した人の全員が作者で、脱原発 ポスター展とは、それらすべての人の共同作業なのだと気づきました。私たちは、最初からこのポスター展がそのような共同作業になると考えていたわけではありません。多くの人から寄せられる反響の渦に巻き込まれるようにして、初めてポスター展の意義と役割を理解したのです。
この本もそのように生まれた作品の一つです。掲載作品は、出版に賛同し高解像度のファイルを送ってくださった方の作品を中心に、編集者の方たちと一緒に選定しました。なかには賛否両論のある作品も含まれているかもしれません。発表当時は違和感のなかった作品が、 今批判の対象になるのは、放射能への恐れが実感として人々に浸透し てきたからなのでしょう。そのこと自体が、これらの作品の果たした役割なのかもしれません。
本書の一枚一枚の作品を題材にして、身近な人と原発について議論することや、少し距離のある人に、それとなく脱原発をアピールするツールとして使っていただければ幸いです。もしこの作品からまた新たな作品が生まれることになれば、事務局一同、望外の喜びです。